なぜ企業経営に「編集」が必要なのか?「アート」がなぜ関係するのか?を編集者出身の起業家が語る

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ものごとの編集会社として、”編集”を使って企業の課題解決する事業に取り組む株式会社midnight sun

当社代表・角田の編集者としての経験が現在の事業のベースとなっていますが、「ものごとの編集会社」と聞いてもピンとこない方も多いでしょう。

そこで本記事では、代表・角田が考える「”経営を編集する”とはどういうことなのか」「”アート思考”がなぜ経営に大事なのか、編集とどう関係があるのか」といったことについてお届けします。

編集やアートに馴染みがない方にとっても、例え話を交えてわかりやすい内容となっているので、ぜひご覧ください。

※本記事は角田へのインタビュー形式で制作しています

経営課題を「そもそも」から解決するには「編集」が必要

—いきなりですが、角田さんにとって編集とはどんなものなのですか?

一言で表すのが難しいのですが、「複雑なものごとや情報を整理し、必要なものを組み合わせることで新しい価値を生み出す作業」と普段は説明しています。

編集者として、情報を集めてそれをもとに記事を作る仕事をたくさんしてきた結果、「”編集”という思考プロセスは様々なことに活かせる」と思うようになりました。

そのひとつが「経営」です。

—「編集」と「経営」は一見繋がりがないように思えるのですが、「経営を編集する」とはどういうことですか?

シンプルに「編集という手法を使って、企業経営における課題を解決していくこと」ですね。

企業の経営課題は、一言で表せられるような単純なものではなく、いろんな事実や条件、気持ちなどが入り組んで発生しているものです。

それを整理した上で根本原因を特定し、「そもそも何を解決すべきなのか?」から決めて課題解決に取り組むことは、まさに「編集」だと考えています。

また、編集者として様々な視点で物事を見る経験が、「実はこんな価値がありますよね」という新しい価値の創造に繋がったりもしています。

—編集者としての技法を活かして、経営課題を解決しているということですが、何か具体例があればお聞きしたいです。

2024年4月時点ではマーケティング支援事業が中心ですが、そのマーケティングにも「編集」は役立っていると思っています。

記事の制作では「誰に・何を伝えて・どうなってほしいのか」を明確にしてから取材をしたり文章を書いたりします。

なぜなら、誰に何を届けるかで、書く内容が全く違うものになるからです。

マーケティングにおいても同じで、「どんな人に・何を伝えて・どんなアクションを取ってほしいのか?」をもとにマーケティング戦略を練っていきます。

例えば「Facebook広告を頑張っているけど、ターゲット的には新聞広告の方が効果が見込めるよね」ということも全然あるので、やはり誰に何をどうやって届けるのかを明確にすることが重要だと考えています。

「誰に・何を伝えて・どうなってほしいのか」はあらゆることに共通する例
「誰に・何を伝えて・どうなってほしいのか」はあらゆることに共通する例

そのカレーは、誰に食べてもらうためのカレーですか?

—「誰に何を届けて、どうなってほしいか」は確かにどの仕事でも重要ですよね。この点について、編集やマーケティングに詳しくない人にもわかりやすく説明していただけますか?

では、カレー屋さんに例えましょうか。

—カレー屋さん、ですか…?

例え話によく使うんですよ(笑)。

私がカレー屋さんだったとして、カレーを作ったとしても、それを誰に向けて提供するかで盛り方やレシピって変わりますよね。

食べ盛りの学生にはもりもりに盛るだろうし、好きな女性を口説きたいならご飯を少なめにしておしゃれに盛り付けるのもいいかもしれません。

でも、逆にカレーをたくさん食べたい学生に、少量でおしゃれに盛り付けられたカレーを提供しても満足してもらえる可能性は低いですよね。

つまり、誰にカレーを食べてもらうかによって、どんなカレーをどのように提供すべきかが変わるのです。

カレーを誰に作るかで盛り方やレシピなどが変わる(例)
カレーを誰に作るかで盛り方やレシピなどが変わる(例)

—言われてみれば、カレーを一つ取っても人や場面によって喜ぶレシピや盛り付けは変わりますね。

それを考えるのが、編集者の得意な思考の一つです。

記事制作なら「伝えたいターゲットに何を伝えるのか」を整理してから取材に臨みますし、マーケティングで言えば「どんな人にどうやって認知してもらうか」を軸に施策を考えていきます。

この他にも、「誰の何の課題を解決するのか」が明確でないまま事業を進めたり、「誰がどんな役割を担って、どんな権限を持つのか」が整理されていないまま組織運営をしたりする、といったケースが意外と多いです。

だからこそ、「根本から整理した上で、本当に伝えたいことを伝える」編集者という存在が会社経営に必要だ、と考えるようになりました。

会社経営における「ズレ」を敏感に察知する

—ここまで「伝える」という部分について話していただきましたが、その前段の「整理する」についてもお聞きしたいです。編集者だからこその「整理」のわかりやすい例があれば教えてください。

皆さんがイメージがつきやすいであろう、会議の事例を紹介しますね。

ある企業のミーティングに参加した時に、会社としての目標や各人の役割などについて話していました。

大まかに方針が決まってタスク分担の話が始まりそうになった時、「まだ各人の役割が明確になっていないので、まず役割から確認しませんか?」と私が提案して役割の整理をしていただきました。

—大事な議論ですね。

また、その役割の議論の中で、Aさんには「デザイン」と、Bさんには「集客」と役割が書かれていたのですが、そこに違和感を覚えたので、議論を止めてもらって再度整理をしていきました。

—どんな違和感ですか?

言葉の意味を考えると、「デザイン」は”手段”を指すけど「集客」は”結果”を意味するんですよね。

「集客」という結果を出すためにマーケティング活動や営業活動をする、そのための制作物を作るためにデザイナーが存在するわけですが、「集客」と「デザイン」が並列に書かれていると言葉の意味が揃わなくなります。

すなわち、「集客」という結果を出すために誰が何の役割を担うのかが明確じゃない、と思って会議を整理した、いうことです。

「結果」と「役割」の関係性について(例)
「結果」と「役割」の関係性について(例)

—確かに、集客するためには色々なアプローチが必要ですし、それぞれのアプローチに役割が設定された方がいいですよね。

そうなんです。

編集者の仕事でも「言葉の意味のズレ」や「文と文の意味の繋がり」などを細かく確認するので、会議など普段の仕事においてもその癖が抜けないのだと思っています。

そもそもの目的や意味するものの認識がズレるとうまくいかないことが多いので、それらがズレないように整理することも編集者が価値を発揮できることだと考えています。

「アート」と「編集」は似ている?

突然ですが、アートは好きですか?

—ものごとの違う捉え方を知ることができて発見や気づきがありますし、刺激を受けられるので好きですよ!

私も似た理由でアートが好きで、美術館にもよく足を運びますし、アートとの出会いによって考え方が変わってきました。

—印象的な出来事や作品はありますか?

ある芸術祭で、現代アーティストの片山真理さんの作品を見た時のことが、今でも強く印象に残っています。

片山さんは両足が義足で、自分の身体をモチーフにした作品を多く手がけているのですが、私が見たのは(記憶が正しければ)手足が何本もある人間を描いた作品で、それを見て「そういえば人間の腕ってなんで2本なんだっけ?」と今まで考えもしなかったことを考えるきっかけになりました。

片山さんがどういう気持ちでその作品を作ったのかは計りかねますが、「ものごとの見方はひとつじゃない。思い込みを捨てて様々な切り口でものごとを見た方がいい」とそこで気づいたのです。

片山真理さんの作品(例)
片山真理さん公式Webサイト

—アート作品との出会いから、今まで違う視点でものごとを見るようにをなったんですね。

これが「アート思考」の一つだと思っているのですが、実は「編集思考」とも結構近いんですよね。

—どういうことですか?

ものごとの前提を疑ってみたり、別の視点で見たりすることで、今まで気づかなかったことに気づいて別の突破口を見つける、という点が共通していますよね。

だから私は、編集者としてクライアントさんと向き合う時に「アート思考」を忘れないようにしようと心がけています。

—そのアート思考が役に立った事例があれば聞きたいです。

福祉事業所を運営するクライアントさんの売上向上を支援することになった時の話をしますね。

障害者の方が手作りで作る素敵なアクセサリーを店舗で販売していて、情報収集を進める中で店舗のお客様の声を聞くと、「家族や友人へのプレゼントとして購入している」という方が結構多かったんですよ。

いろんな情報を分析した上で、「アクセサリーを制作してアクセサリーとして販売するんじゃなくて、そもそもプレゼントとして販売した方がお客様もクライアントもハッピーになる」と判断し、クライアントに提案してプレゼントとしての展開に切り替え、パッケージデザイン・店舗デザイン・価格の刷新に踏み切りました。

「この街をどんな人でも心地よく暮らせる場所にしたい」という代表の方の想いも聞いていましたし、その想いがお客様により伝わる施策にもなってよかったです。

—ものごとの前提を疑ったり、別の視点で考えることで、新たな価値をもたらしたのですね。

まさに、このアクセサリーが「プレゼントとしての価値もある」という別の視点に気づき、戦う市場を変えたのが突破口になりました。

「複雑なものごとや情報を整理し、組み合わせることで新しい価値をつくっていく」のが編集だと冒頭に話しましたが、アート思考によって前提から疑って考えることで、本人も気づいていなかった新たな価値の創造により貢献できると考えています。

経営者の頭を揺さぶり、本当に伝えたいことを一緒に考えたい

—編集思考もアート思考も経営に欠かせないものなんですね。

作品によっては、アート作品の背景や作家さんの気持ちがわからないものもあるのですが、アートって新しい視点や切り口を提示していくものじゃないですか。

既存のものごとや価値観を疑ってみて、自分の気持ちやメッセージをアート作品という形で表現するものだと思っています。

たとえば自分が考えていることでも、別の切り口や視点で捉えると、以前とは違ったアイデアが出てきたりしますよね。

私はこの「いろんな切り口で考えてみる」ことをお客さんと一緒にやっていきたいと考えています。

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—アートと経営はあまり共通点がないと思っていましたが、意外と近いところにあると気づきました。

ちなみに、まだ仮説なのですが、アート思考は組織運営でも重要だと思っているんですよね。

—それはどういうことですか?

先述の通り「わからない」作品も多いのですが、むしろその「わからない」ことが好きなんですよね。

意味を無理にわかろうとするとストレスを感じますし、自分がそのアートから何を受け取って何を想うかで十分だと思っています。

人間関係も似ていて、他人のことをわかったつもりでもわかっていなかったり、会社においても「社員とは価値観を共有できている」と思っていても実はズレていたりするものです。

他人とは価値観が違って当たり前なので、だからこそ自分の考え方すら疑って様々な視点で人の気持ちを考えて、適材適所で組織を作っていくことが大切だと考えています。

繰り返しますが、これはあくまで仮説です。

—確かに、わからないからこそ知ろうとしたり、自分の常識が間違っているのではないか?と疑ってみたりしますよね。

さらに言うと、無理にわかろうとしすぎないために、「わからない」に慣れることも必要だと考えています。

だからこそアート作品を見ることで、「わからないけどなんか面白いな」という感情がわかってくるはずです。

—アートって、一回見ただけではそれが何を示しているのかわからなかったり、複数のメッセージがあったりしますよね。

まさにそうです。

私は、クライアントさんの思考を揺さぶって頭をクリアにした上で「誰に何を届けたいのか」を明確にしていくサポートをしたいと考えています。

アート思考によって自分の今の考えを疑い、編集思考によってものごとを組み立てていく、といった感じです。

アート思考も駆使して経営を編集する、という私の考え方を少しでも理解していただけたら幸いです。

株式会社midnight sunは、東北を中心に”ものごとの編集会社”として企業の経営課題の解決を支援しています。

  • 「売上が落ちてきているけど、そもそも何からテコ入れすればいいかわからない」
  • 「製造している商品には自信があるけど、なぜか購入に繋がらない」
  • 「会社としての施策がごちゃごちゃしてきて、”何のために何をすべきか”が不明瞭になってきている」

といったお悩みに対して編集者が伴走し、マーケティング・広報を中心に経営課題を”そもそも”から解決しています。

相談してみたい、と思った企業様は、ぜひこちらから気軽にお問合せください。

執筆:永山真優