「編集者の質問はなぜ答えやすいのか?」「質問がなぜお互いの理解につながるのか?」を編集者が実践してみた

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ものごとの編集会社として、”編集”を使って企業の課題解決する事業に取り組む株式会社midnight sun

その鍵になるのが「質問」で、この質問の出来が事業の方向性やプロダクトの価値に大きく関わってくる、と感じています。

当社としてもこの「質問」を重要視しているので、今回は「普段どんなことを考えて質問しているのか?」「編集者の質問はなぜ答えやすいのか?」について紹介していきます。

実際の質問事例を紹介しているので、経営に関わる方もインタビュー・質問をする機会が多い方もぜひ読んでみてください。

編集者はこのように質問する

はじめに、当社代表の角田から、以下の記事を執筆してくださった永山真優さん(編集者志望)が「どんな仕事だとポテンシャルが発揮できそうか?」を理解していくための質問をしていきました。

「AとBではどの点に違いを感じますか?」

角田:永山さんが「未経験ながら編集者の仕事をやってみたい」ということで、そう思った理由などについて聞きながら、「どういう会社(メディア)でどういうポジションに就けるとポテンシャルが発揮できそうか?」について”質問”によって理解を深めていきたいと思います。

永山:よろしくお願いします。

角田:まず編集者という職業について聞いていきますが、編集者にどんなイメージを抱いていますか?

永山:インタビューをする際に、話し手が話したいことを引き出して、それを読み手がわかりやすい形にして伝える人、というイメージがあります。

角田:100点満点の回答です(笑)。

なぜそう思ったのですか?

永山:いろんな記事や動画を見る中で、「一人で話すより、編集者が隣にいた方が話しやすいし気付きも増えるんだろうな」と思うことが多かったからです。

話し手の想いを編集者が補足してわかりやすく伝えた結果、話し手も「スッキリした」と語っているものが多く、話し手自身の新しい発見や行動の振り返りにも繋がっている、と感じています。

角田:確かに、そういう側面はありますね。

YouTube等のインタビュー動画をイメージしていただきたいのですが、「編集者がインタビューしている動画」と「一人語りの動画」ではどこにどんな違いを感じますか?

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永山:私が感じるのは、編集者がいるインタビュー動画は「見ている人が共感する質問をしてくれている」、ですかね。

「そうそう、それ聞きたかった」という的確な質問をしていますし、質問の仕方も勉強になります。

一方、一人語りの動画は、自分が伝えたいことを整理した上で理路整然と伝えている印象があります。

角田:そういう印象を持った上で、永山さんはなぜ編集者をやりたいと思ったのですか?

永山:編集者がインタビューをすることによって、話し手の想いを伝えられるだけでなく、「新たな気付きやアイデアを生み出せて世の中に波及させられる」のが魅力に感じるからです。

「①②③の中でどれが一番近いですか?」

角田重要なキーワードな気がするので、ここを深掘りしますね。

新たな気付きやアイデアを生み出すのが好きなのは、何か原体験があるのですか?

永山:大学で英文学を学んでいた時に、本や過去の論文を読んで、時代背景や著者の考えを理解した上で「自分はどう思うのか?なぜそう思うのか?」を考えながら論文を書くのが楽しかったんです。

それは原体験にあるかもしれません。

角田:昔の学者や著者も、過去の時代背景や文献を読んだ上で自分の考えを展開していたわけなので、永山さんと同じ考えかもしれませんね。

永山さんも新たな気付きや考えを発表したりするのが好きなんですか?

永山:好きですね。

角田:それの何が好きですか?

永山:えぇ、なんだろう…。

角田:例えば、誰も論じていないことに切り込むのが好き/他人の考えに自分の切り口を加えるのが好き/書く行為が好き、など色々考えられますが、この中で近いものはありますか?

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永山:それで言うと、情報を閲覧した上でひらめきや発見を生み出すことと、それを文章にまとめることが好きですね。

角田:ということは、「他人の考えに自分の切り口を加えるのが好き」が一番近いかもしれませんね。

それが好きだと気づいた出来事や、それが生かされた経験などはありますか?

論文で自分の考えをしっかり伝えられた、仕事で自分のひらめきが生かされた、など時期は問いません。

永山:自分にしかない切り口で新たな考え方が生まれた、という内容の話ですが、最近「この世に”やらなきゃいけないこと”なんてないのでは?」と考えるようになりました。

例えば、会社に行くのが嫌だとしても「行く」選択をしているのは自分だし、しなきゃいけないとされることだって「した方がプラスになること」だと言えますし。

そうやってポジティブに捉え直すことで、そもそも「やらなきゃいけない」という考えがなくなるのかも?と思っています。

そういう思考の転換によって、人生を豊かにできるんじゃないか、と考えるようになりました。

角田:当たり前とされることもしっかり見つめ直した結果、自分なりの考え方が浮かんできた、という良い例ですね。

テーマが壮大でちょっと面白かったです(笑)。

「先述の話と通ずる点がありますね」

角田:編集者に話を戻しますね。

これから編集者という仕事ができるとして、どういう役割を担いたいと思いますか?どんな編集者になりたいですか?

永山:役割、ですか…?

角田:「(編集者の仕事の中でも)この部分を特にできるようになりたい」や「〇〇さんみたいな編集者になりたい」など、永山さん自身が描く編集者像を聞きたいです。

永山:それで言うと、「世の中で”普通こうだよね”と言われていることも、そうじゃないことも多い」と伝えられる編集者になりたいですね。

調べてみると、根拠がないのに”常識”とされていることが本当に多いんですよ。

”常識’’は思い込みでしかなく、「他の考えや選択肢もあるよ」ということを伝えられたら人生の選択肢が広がると思いますし、「誤った”常識”が誰かを生きにくくさせているかもしれない」とに気づくきっかけにもなるはず。

そのような根拠やアイデアをちゃんと伝えられる編集者になりたいですし、それを通じて一人ひとりが生きやすくなるようなお手伝いがしたいですね。

角田世の中で当たり前とされることも一度疑ってみて、情報をしっかり収集して別の視点で見てみることで「こうも言えるよね」と論じるのは、大学時代の話とも通じますね。

また、以前「社会的マイノリティに関わる記事を書きたい」と言っていましたが、その点ともようやく繋がりました。

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永山:その共通点には気づいていませんでした。

角田:そして、ここまでの話から考えると、永山さんはライターなど制作する立場よりも、編集やディレクターなど「そもそもどんな記事(メディア)を制作して誰に届けたいのか?」を考えるポジションが合っている気がします。

やっぱりここまで聞かないと相手のことはわかりませんね。

編集者からの質問はこう感じる

ここまでの質問について、永山さんに感想や気付きを聞いてみました。

質問には「相手が普段考えないことを考える機会を作る」目的もある

角田:ということで、編集者である僕から色々質問しながら、永山さんの考えをクリアにするお手伝いをしてきましたが、どう感じましたか?

永山「言われてみれば、それは考えたことがなかったな」という質問が多かったです。

自分が答えた後に「この質問の意図はそういうことか」と気付くこともありましたし、補足したり選択肢を提示してくれたりしたので答えやすかったです。

角田:そう言ってもらえてホッとしました。

質問には「相手が普段考えないことを考える機会を作る」目的もあると思っていますし、質問の意図を明確に伝えるために選択肢を提示したりもするので、この2点に気づいてもらえてよかったです。

永山:なぜその2点を意識されているのですか?

角田:特に後者に言えることですが、「自分は何を聞きたいのか?」が明確であるかどうかに関わるから、ですね。

自分の質問に対して「相手がどう答えるかな?」と仮説を持ちながら聞くことで、「相手にどんな答え方をしてほしいのか?」を考えることにも繋がりますし、「この質問は答えやすいのかな?」と質問の仕方の振り返りにもなります

なので、僕がいつも企業さんとミーティングをする時は、「この会社は何をしたいのか?」「どんな考えを持っているのか?」をある程度理解してから質問するようにしています。

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永山:相手が普段考えていないことを聞くことと、相手が答えやすい形で聞くのが大事、ということですか?

角田:そうですね。

そのためにも「相手がどう答えるのか?」の仮説を持っていることが重要だと考えています。

細分化した上でイメージをすり合わせる

永山:その「仮説を立てる」というのは、「自分が感じたことが合ってるかどうかを相手に確認する」ということですか?それとも「相手が考えていそうなことをリストアップする」ってことですか?

角田:人によりますね。

「私は(一般的には)こう考えますが、あなたはなぜそう考えるのですか?」と”比較”で聞く人もいますし、僕は後者に近く「相手が話したことを細分化して考えて、選択肢を提示する」ことが多いです。

永山さんの話の例だと「論文を読んで理解する/切り口を見つける/書く、のどれが好き?」みたいに、相手の行動のプロセスをイメージしてみて、細分化した上で「どれが近いですか?」と聞くようにして考えをすり合わせるようにしています。

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永山:確かに論文の質問も細分化でしたね。

角田:というのも、「カフェが好き」と一言で言っても「内装(雰囲気)が好き/飲み物が好き/おしゃべりが好き」など色々違うじゃないですか。

細分化しないとこの細かいニュアンスが伝わらないし、これをちゃんと確認することで認識のずれが少なくなる、と考えています。

永山:例えばカフェの内装が好きな人なら「もしかしたら建築が好きなのかも?」という仮説も立てられますしね。

角田:その通りです。

ちなみに、こういうことを考えるのが好きな人は、編集者に向いている気がします。

解説&まとめ

今回の記事では、当社代表の角田から編集者志望の永山さんに質問しながら、「編集者はこんなことを考えて質問する」ということについて紹介していきました。

本記事で書いた内容はあくまで一例ですが、編集者がインタビューやミーティングの場にいるイメージが少しでも湧いていたら幸いです。

今回は、主に以下2点について紹介しました。

  1. 相手が気付いていないことに気づいてもらう
  2. 相手の考えを細分化し、自分と相手の頭の中にあるイメージをすり合わせる

この2つによって、企業やプロダクトの本当の価値に気づくだけでなく、働く人同士の相互理解にも繋がっていくと考えています。

人も物も、複数の側面から見てみないと本当の姿は見えてこなくて、かつフィットする市場や顧客、人も違ったりするので、編集者が間に入って「企業やプロダクトの価値を編集する」ことに意味があると考えています。

株式会社midnight sunは、東北を中心に”ものごとの編集会社”として企業の経営課題の解決を支援しています。

  • 「売上が落ちてきているけど、そもそも何からテコ入れすればいいかわからない」
  • 「製造している商品には自信があるけど、なぜか購入に繋がらない」
  • 「会社としての施策がごちゃごちゃしてきて、”何のために何をすべきか”が不明瞭になってきている」

といったお悩みに対して編集者が伴走し、マーケティング・広報を中心に経営課題を”そもそも”から解決しています。

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また、「こんなテーマの記事を読みたい」というリクエストも大歓迎です。

執筆:角田尭史

編集:永山真優