社会の変化は恋愛・結婚観の変化?日本合コン協会代表 田中さんに学ぶ「良いパートナーシップの築き方」と「暮らしの価値観の見つけ方」|スマートシティ社会実装コンソーシアム #note

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スマートシティを軸としたまちづくりを推進する一般社団法人スマートシティ社会実装コンソーシアム内で活動している「まちの魅力発掘・活用ワーキンググループ」では、街の魅の見つけ方やデータを活用した魅力的な街の作り方を探求しています。

一般社団法人日本合コン協会代表理事 田中絵音さんをゲストに迎えて開催した定例会では、「恋愛観・結婚観の最新の事情」「良好なパートナーシップに必要なこと」などをお聞きし、自分が街に求めることをデータを用いて考えるワークを実施しました。

社会情勢の変化にともなう恋愛・結婚のトレンドの驚くべき変化や、そこから考えるまちづくりの姿など、「恋愛・結婚」という誰しもが考えるテーマだからこそ興味深い話が盛りだくさんの内容となりました。

「自分はどんな街に住みたいんだろう?」を考える時に「誰とどんな暮らしをしたいんだろう?」ということも絡んできますが、少しでもヒントになれば幸いです。

社会情勢とともに変わる恋愛観・結婚観

3年で1000回の合コンを開催し、2012年5月8日(コンパの日)に一般社団法人日本合コン協会(以下日本合コン協会)を設立した田中絵音さん。

講演活動、書籍出版など婚活・恋愛に精通した専門家として活動する田中さんに、昨今の恋愛・結婚事情やその社会背景について解説していただきました。

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(一般社団法人日本合コン協会代表理事 田中絵音さん)

日本合コン協会代表による「合コンTips」

まずは、日本合コン協会の事業内容や、その中で見えた合コンのコツなどを紹介いただきました。

イベント運営、商品プロデュース、資格講座といった事業を展開する日本合コン協会。

商品プロデュースの一事例である「LOVEサイコロ」は、2つのサイコロを1回で振ることで「誰が」「何をするか」を決めるものですが、これは「合コンの盛り上がるゲームは、一瞬でルールがわかり、すぐに結果が出るもの」という経験則をもとに開発したそうです。

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また、合コンで必ず行う自己紹介は「名前」「職業」「休日の過ごし方」の3項目がおすすめだと田中さんは語ります。

趣味ではなく「休日の過ごし方」なのは、ここに人間性が出るから、という理由だそうです。

実際に参加者全員で自己紹介をした際も、カフェで読書、運動、飲み歩きなど様々な過ごし方が上がり、それぞれの人柄が垣間見える瞬間でもありました。

出会いのきっかけ第1位:マッチングアプリ!?

続いては、社会情勢の変化による出会い方やパートナーへ求めるものの変化について解説していただきました。

令和6年 こども家庭庁全国Web調査のデータの中で、田中さんも参加者も驚いたのが「出会いのきっかけ第1位:マッチングアプリ」というデータ。

パートナーとの出会い方に関する直近5年間のデータを集計した結果で、なんとマッチングアプリが全体の25%を占めています。

これは、コロナ禍で職場でのコミュニケーションや合コンの開催頻度が減り、一人だけでも出会いを探せるマッチングアプリの需要が高まったから、と田中さんは考えています。

昨今では、おびただしい数のマッチングアプリがあり、王道のアプリから価値観マッチング系、合コンのセッティング用途のものなど、様々なマッチング方法を各社が提供しているのが現状です。

「共働き前提」で男女がパートナーに求めるものとは?

国立社会保障・人口問題研究所の第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)によると、「結婚意識」に関する項目では「いずれは結婚する(したい)」と考える人は男女ともに8割超。

また、「なんで結婚しない(していない)んですか?」という設問で「出会いがない」の回答が最多だった中で、

  • 異性と上手く接することができない(恋愛のコミュニケーションが苦手)
  • 趣味・推し活などに時間を使いたい
  • 身近に同世代の未婚者が少ない

といった声も多かったそうです。

かつ、男女それぞれに求めるものには、男性から女性には「経済力」、女性から男性には「家事・育児への参加姿勢」といったこれまでにない傾向が見られています。

これは「共働きで家庭を築いていく」という前提で考えていることが大きい、と田中さんは分析しています。

ちなみに、1995年に共働き世帯数が専業主婦世帯数を逆転しており、以降は共働き世帯の割合が右肩上がりに増加している(内閣府 令和5年版男女共同参画白書より)そうです。

恋愛観と結婚観の違いと、良い関係性を築くために大切なこと

最後に解説いただいたのは、恋愛観と結婚観の違いや、良い関係性を築くために大切なことについて。

結婚生活は、以下の画像のような要素が複雑に絡んで成立しているそうです。

だからこそ、パートナーと価値観が一致している(近い)こと、何かあった時に話し合える関係性であることが大事だ、と田中さんは語ります。

離婚の理由第1位が「性格の不一致」であることも、これらの重要性を裏付けていると言えます。

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マクロミルによる20〜30代向けのアンケートにおける、恋愛で大事にしていることの男女のTOP3について紹介いただきました。

男性

  1. 感謝の気持ちを伝える
  2. 思いやって行動する
  3. 価値観や趣味が合う

女性

  1. 思ったことや感じたことは素直に伝える
  2. 相手の価値観を理解し歩み寄る
  3. 自分らしく素のままでいられる

男女とも1、2つ目は一致していましたが、3つ目が少し違うことがわかるでしょうか。

男性は「価値観や趣味が合うこと」に喜びを感じる一方で、女性は「価値観が趣味が違っている部分があっても自分が自分でいられること」を重視している、ということです。

この結果から田中さんは、二人で一致している部分と同じくらい違う部分も尊重してあげるのが大切だ、と語りました。

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そして、「結婚とは、恋愛の仮定でお互いのいろんな部分を見た上で、その先に一緒に人生を歩むと決めること」という前提のもと、田中さんは「大切にしていることや譲れないことなどは、結婚する前や結婚直後に確認し合うのが大切だ」と語りました。

お互いの価値観や考え方を理解して、何かあった時にそれらに寄り添うためには最初に対話が必要である、という理由だそうです。

実際、参加者から「一緒にいたいけど一人でいられる時間も欲しい」「子供ができても夫婦間の時間も持ちたい」「旅行に2人で行くのも1人で行くのもあり」など様々な結婚観の考えが寄せられ、その考えを早いうちに把握する重要性を窺い知ることになりました。

ちなみに、田中さんによると「煮詰まった時は一旦距離を置くのも有効」だそうです。

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「結婚には上の画像のようにメリットデメリットがあり、結婚するかどうかはそれぞれの自由。だけど、結婚すると一人では味わえない世界もあるのも事実」

田中さんはそう締めくくりました。

どんなパートナーとどんな場所でどんな暮らしをしたいのか、それを考えることが自分の生活の充実につながる、という示唆をいただいたような講義となりました。

客観的データと主観の両方から見る「住む街への満足度」

定例会後半は、田中さんの講義をもとに「自分はどんな街に住みたいのか?今の街に満足しているのか?」を考えるワークショップを実施。

実は、講義の前に東京大神宮まで歩いていき、飯田橋の街の好きなところやもう少しなところをそれぞれ発見した上での実施でした。

ちなみに、東京大神宮は「縁結びの神様」が祀られているので、今回のテーマにもピッタリでした。

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ウェルビーイング向上には「社会性」も欠かせない

最初にウェルビーイングについて当団体の土屋が解説しましたが、これには理由がありました。

WHO(世界保健機関)は、ウェルビーイングを「身体的、精神的、社会的に良好な状態であること」と定義しています。

街はいろんな人がいろんな動機で集まって形成されているからこそ、街での社会的な付き合いが住民の幸福度に直結する、と当コンソーシアムでは考えています。

パートナーや親・子供、近所付き合いなどが例にあげられ、その人たちの良好な関係を築くこと、ともに住みたい場所を作っていくことがウェルビーイング向上に寄与するのです。

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自分の街への満足度をデータ化してみよう

デジタル庁が作成した地域幸福度(Well-being)指標アンケートは、デジタル田園都市国家構想の実現に向けて活用できる指標作りが目的のもので、「都市環境」「自然環境」「自分らしい生き方」という3カテゴリの24項目のレーダーチャートがアンケートの回答結果から作成されます。

さらに、都道府県・市区町村ごとに客観的データに基づくレーダーチャートがあり、回答者が回答結果と重ねて比較することで、

  • 客観的データよりも満足している項目
  • 客観的データよりも不満な項目

がわかり、個人にとっては自分の街の好きな部分や物足りない部分がわかり、自治体やまちづくり団体にとっては街の特徴づけや改善点の把握に役立つものになっています。

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出典:地域幸福度指標活用ガイドブック(デジタル庁)から

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出典:デジタル庁「地域幸福度指標」ダッシュボードから 東京都千代田区のレーダーチャート(2024年度調査)

ワークでは、実際に地域幸福度(Well-being)指標アンケート*に回答し、その結果を持ちよって自分が街に求めることや好きなところを共有し合いました。

(*(一社)スマートシティ・インスティテュート提供))

約50個の設問から出力されるレーダーチャートは実に様々で、グループごとの会話の中で、

  • 今よりもっと自然が多い場所を求めているのがわかった
  • 便利さが大事だから今の街にいたい
  • 今の街には、古い居酒屋の街並みや都市景観に落ち着きを感じている

などの意見があり、データをもとに自分の求めていることがわかり、街への多様な価値観を知る機会となりました。

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  • アンケートは(一社)スマートシティ・インスティテュート提供
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どんな夫婦・カップルに楽しく暮らしてほしいのか?を考え実践するまちづくりを

日本合コン協会田中さんの講義と、地域幸福度(Well-being)指標アンケートを用いたワークは、「自分はどんな街に住みたいのか?自分は今の街にどんな印象を持っているのか?と”自分(住む個人)”にフォーカスして考える機会となりました。

田中さんが最後に話した「どんなパートナーとどんな場所でどんな暮らしをしたいのか」を考える上でも、今回のようなワークや対話が役に立つとお分かりいただけたでしょう。

一方で、まちづくりを推進する自治体や企業に主語を変えると、「どんな夫婦・カップルに楽しく暮らしてほしいのか?」「それを裏付ける街の魅力や資源は何なのか?」を考えることが重要だと感じました。

「子育て世代もぜひ住んでください」よりも「〇〇な特徴があるため、子育て世代にもピッタリです」と少し具体的に訴求した方が、街のカラーや魅力がくっきり見えるようになるでしょう。

今回のレポートが、これらのことを考えるヒントになっていたら幸いです。

一般社団法人スマートシティ社会実装コンソーシアム(SCSI)とは?

一般社団法人スマートシティ社会実装コンソーシアム(SCSI)は、スマートシティの具体的な社会実装と持続可能な仕組みづくりを目的に2022年に設立された団体です。

教育・医療・交通・商業・エネルギー・行政など社会全体のDX化「スマートシティ」への取り組みが加速する中で、あらゆる業態・地域の垣根を越えた官民連携のエコシステムの形成を目指して活動しています。

民間企業・大学・自治体など200以上の会員団体とともに、

  • スマートシティに関わるテーマ別の分科会
  • データ連携基盤を活用したサービス開発に関する勉強会
  • サービスカタログ・マーケットプレイスを通じたサービスの掲載・閲覧
  • サービス開発環境の提供、開発者コミュニティの運営

等の取り組みから、スマートシティの社会実装に向けた知見の蓄積と実践に取り組んでいます。

その中で、「街のにぎわい広場」「グリーンインフラ×ICT」「保健師業務支援サービス」など、テーマごとに分科会やワーキンググループを設置し、活発に議論や活動を行っています。

関心のある方はぜひSCSIのWebサイトをご覧ください。

https://www.sc-consortium.org/